「神は数学者か?」 - 万能な数学について
マリオ・リヴィオ著 千葉敏生訳 早川書房
この本を図書館で借り最初に読み始めた時、「この本を返却期限までに読み終えられるのかな」と心配になった。割りと小さな活字でびっしりとページが埋まっており、しかも厚みのある本だったからである。この心配は初めの数ページを読み進むまで抱き続けたのだが、しばらくすると、頑張れば読めそうだと思うようになった。数学が苦手で文系に進んだ私でも何とか付いて行ける内容に思えたし、翻訳も割りと自然な日本語だったからである。
著者は巻頭でアインシュタインの「数学は、経験とは無関係な思考の産物なのに、なぜ物理的実在の対象物にこれほどうまく適合するのか?」という言葉を紹介し、「自然科学における数学の不条理な有効性」の世界に誘ってゆく。そしてギリシャ時代から近代にわたる数学の発展を紹介しながら、「数学は発見か、発明か?」という疑問が歴史的にどう考えられてきたかを紐解いている。難しい数式はいっさい登場せず、数学がどのような考え方を発展させ発達してきたかを書いているので、数学に対するあこがれだけで読んでいる私でも、苦労はしたが、読み進むことができた。
但し集合論の辺りは全く理解できなかった。予備知識がないとこのへんは無理なのだろう。字面だけを追い読み飛ばした。
そこを過ぎるとさほど途方に暮れることもなく読了できた。訳者あとがきを読むと、全体を簡潔に要約してあり、これを先に読んでおけば楽だったかな、とも思った。
科学評論の分野の翻訳物なので、多少「これは英語の順番通りに訳しているのだな」と感じる部分があっても文章は分り易かった。作者の文体を残そうとして酷く読みにくい翻訳になりがちな文芸物とはだいぶ違うと思う。
著者は最後に自分なりの結論を述べているがそれはあまり重要なこととは思えない。分かったような分からないような話である。しかしながら、現代、実に多岐にわたる分野で応用されている数学の沿革を歴史的に勉強できたことは成果だったと思う。
表題に出てくる「神」は当然キリスト教が考える神であり、西欧社会で読まれることを念頭に書かれているのは明白である。著者が信仰心を持っているのかどうかは分からないが、宇宙はもともと数学的に作られているのか、或いは人間が自然を論理的に理解するために数学という方便を使っているだけなのか、というふうに読み替えればいいのではないだろうか。
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