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2012年7月24日 (火)

「ちばてつや」 河出書房新社

漫画家生活55周年記念号、と副題の付いているこの本、実はひょんなことから図書館で借りたのである。その時図書館に行ったのは、長い予約待機期間の末借りられた「資本主義が嫌いな人のための経済学」という翻訳モノを読み進むことができなくなり、返却するためだった。正確で適切そうな訳語が付されていたのだが、どうやら著者が英語で言っている語順に忠実に訳されているように思え、研究者がゼミで輪読するような本であり、素人が見識を広めるため程度に読むにはきつすぎると思わざるを得なかった。

その本を返却して、珈琲店で読むのに一冊何かないか、と漫画コーナーを眺めていたらこの本が目に入ってきて借りることにした。

弟であるちばあきおのことが読めたことは大いに嬉しかった。「キャプテン」「プレーボール」の愛読者だったからである。早逝されていたとは知らなかった。残念である。

今をときめく売れっ子漫画家がこぞって55周年に賛辞を寄せており、この漫画家の影響力の大きさを改めて知ることとなった。その賛辞を読むとそれぞれの漫画家の個性も浮き彫りにされているのが面白かったし興味深かった。

ちばてつやはこれまでも何回かテレビに姿をお見せになっていたのでどんな印象の方かは知っていたつもりだったし、この本を読んで浮き上がってくる人間像もその印象通りの方だった。真面目で誠実、努力家、人に優しい。この世代の大漫画家の多数がそうであったように、生活の必要から必死に書き続けて現在のステータスを得たこともよく分かった。しかしこのような立派で円満な人格者であることにどことなく物足りなさを感じないでもなかった。少なくとも天才肌の方ではないようだ。それでも作品には天才的なもの(登場人物の表情・人柄、構成力・・・・・・)を感じざるをえないのだから凄いと思う。相当苦労しながら作品を生み出されたようである。

大ヒット作「あしたのジョー」についてたくさん触れられているのは当然なのだろう。学生に与えた影響では「カムイ伝」と並ぶ作品だったのだと思う。しかし、殴り合いの喧嘩などしたことのなかった私には「あしたのジョー」は凄惨すぎて読めなかったし、今でも読んでみようという気になれない。この本ではこの漫画に大きく影響されたのちの作家の漫画シーンのこともたくさん紹介されていた。

ご本人の大陸からの引き上げの模様を描いた「家路 1945~2003」という20ページほどの作品が収録されており、これは多くの人に是非読んでいただきたい作品だ。こういう歴史は嫌でもどうしても知っておかなければならないことがらだ。短編なのでさっと読める。しかも一巻の書物のような情報量が含まれていると思った。

終盤に掲載されている横綱白鵬との対談もちばファン、大相撲ファンには必読に値する。こういう人が「のたり松太郎」を書いていたのなら、漫画があれだけ面白かったことにも頷けるのであった。「のたまつ」ちゃんと読んでいないので単行本を買わなくてはいかんかな。

因みに私が好きだったちば漫画は「ちかいの魔球」、「紫電改のタカ」です。

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